【第一章】プロローグ(暗黒時代のはじまり)

2021/08/04

引っ越しと転職と年収50%ダウン

生まれてからずっと、名古屋圏で生活していました。

ところが、あるとき妻が体調を崩し、お医者さんにこう言われたんです。

「空気の良いところで静養した方が良いですね」

と。

帰ってから、妻と相談です。空気の良いところと言われても、引っ越すとなると大変。その時すでに子供は保育園で、お友達と離れるのもかわいそうです。

が、もろもろ考慮した結果、子供には申し訳ないけれど引っ越すことを決めました。行先はとある方から紹介いただいた、隣県の山奥です。

名古屋からは150Kmほど離れていて、山奥で自然豊かなド田舎。静養にはぴったりです。ただ、その時勤めていた会社に毎日通うのはさすがに無理…。会社に対しても、(今考えればありがたい環境だったと思えますが)当時は不満が多かったのであっさり退職することにしました。

能天気な僕は、あまり考えることもなく、「引越し先で職を探せばいいや」ぐらいに思っていたのです。

この時が、僕の人生の中での暗黒時代の始まりでした。

引っ越したのは良いけれど

引越し先は、シカが出るような山奥です。大きな会社なんてありませんし、転職を世話してくれるのはハローワークのみ。田舎では、エンジニアやプログラマーの求人なんて無いんだなぁ…と、この時ようやく気が付いたりして。

げげげ、どうしよう…と焦っていたら、運よく新聞の折り込み広告で「社内SE募集」という求人情報を発見します。

速攻で電話して面接にこぎ着け、「VBとOracleの経験があるなら大丈夫そうですね」ということで、無事に就職が決まりました。

ただ、残念ながら条件はひどいもので、残業代は付かない、というより、給与計算方法が非公開で経営者の一存によって決まるという、田舎ではよくあるパターン(違法です)でした。

働き出してから判明したのは、前の職場と比べると、年収はほぼ半分になったということ。それでも周りの人から言わせれば、仕事に就けただけラッキー、なのだそうです。

取りあえず職が見つかって落ち着いたし、まぁ、仕方ないか…と思いつつ、節約の日々が始まりました。

そして四年後… 妻からの相談

このブラックな会社に勤務して四年ほど経った頃でしょうか。

まだ暑い9月、仕事から帰ってくつろいでいると、妻に「ちょっと話があるんだけど…」と暗い顔で呼ばれました。なんだろう…。その雰囲気にイヤな予感を抱きつつ、話を聞いてみます。

内容は、要するに家計がかなりマズイという相談でした。少し前に車検があって結構な費用がかかったのと、そこにもろもろの支払いが重なって、夏のボーナスのお陰でギリギリセーフ、という状況だったのだそうです。

派手な生活をしている訳でもないし、小学校に上がっていた子供達には習い事も我慢して貰っている状態。周りの子はピアノに習字に、といろいろと習い事をしている子もいるのに、お金が無いという理由で行かせてあげられないのは、とても情けない気持ちになります。家計は妻に任せきりなので、なんでそうなるんだ?と苛立ちを覚えつつも、冷静に考えてみれば仕方のない状況でした。

溜まるストレス

もともと収入についての不安はありましたが、ここに来てピークに達し、さらに職場に対する不満も募っていました。(またか、と言われそうですが。)

それまでの「仕事」に対する感覚は、「忙しくて大変な時もあるけれど、やり甲斐もあるし、学んで成長していくのは楽しい」というポジティブなものでした。ところが、この会社に入ってから、初めて「イヤイヤ仕事に行く」という日々を過ごしていました。

すぐに怒鳴るタイプの人間が多く、強く言ったもん勝ちの社風。もともと気の弱いタイプの自分は、強く言い返すことも出来ず、人間関係に強烈なストレスを感じていました。仕事内容も当初の予定とは違い、なぜか生産現場の作業員として、ラインにも狩り出されました。製造業の現場には多くの危険があって、もう少しで命を落としていたかもしれない、というヒヤリ・ハットも経験しました。

そんな状態に対して、強い不満が溜まっていきました。

なぜかmixiに届いた、人生を変えるメッセージ

丁度そんな頃に、一通のメールが届きます。

今考えると、このメールが自分の人生を大きく変えたのですから、世の中、何があるか分からないものです。

■■ さん、こんにちは。 ●● さんからのメッセージが届いています。 件名:失礼致します。

突然申し訳ありません…

どうやら、全く使っていなかったmixiにメッセージが届いたみたいです。

「どうせ売り込みのメールか出会い系のくだらないメッセージだろうな」と思いつつも、既読にするためだけにわざわざログインし、一応目を通してみました。

届いていたのは求人の案内でした。恐らく、放置してあったプロフィールを見て送ってきたのでしょう。

「なーんだ、エンジニアの求人メールか。どうせ都会の話でしょ?田舎じゃ無理だよ…。」

と読み流していたら、最後のこんな一文に目が止まりました。

事例:家庭の事情により週4日のみの稼働を希望されたフリーエンジニアの方に月単価55万円の案件紹介実績あり

へー、そんなのもあるんだなぁ。その金額が貰えるならいいよな、羨ましい…。程度にしか思わなかったのですが、この一文が妙に引っかかり、後々まで記憶に残っていたのでした。

40代前半、手取り19万円。

当時の月収は手取りで19万を切っていました。会社の業績は安定していてボーナスもきちんと出ていましたが、いわゆる年収(税引き前の金額)で言えば、約360万円。同僚のみんなはどうしているんだろう?と気になってリサーチしてみると、多くの人は、奥さんと共働きしていて、子供達は爺ちゃん婆ちゃんが面倒見る、というパターン。ダブルインカムなので特に収入面で困ることは無いとのことでした。

ところが、自分の場合は奥さんが働きに出られない事情があり、ずっとこのままの収入で行くと、近いうちにジリ貧が見えています。二人の子供達を高校にすら行かせてやれない、なんて事にもなりかねません。